エンタメ感想製作所

音楽や映画、ゲームなどの感想・レビューを素人なりに投稿。専門知識はないけど好きな気持ちは皆平等。

【ディスクレビュー・感想】RASが作る新時代の幕開けとなるか RAISE A SUILEN 1stアルバム『ERA』

先んじてライブのレポートを書いたうえ、発売から随分間が開いてしまいました。遅ればせながらようやくRASの1stアルバム『ERA』のレビューを書いていきます。

ライブのセトリがアルバムの曲順と一緒だったので、本来ならこっちを先に書いておきたかったんですが、ライブはやはり鮮度が大事なのでレビューは後回しにしました。新曲についてはこっちで書きたかったので、中々窮屈な思いをしながら書いていたり。
例によって新曲以外はあまり深くは触れずに進行しますが、過去に書いたレビュー記事のリンクを貼りますので、どんなことを書いていたか知りたい方はそちらからどうぞ。

f:id:shun0017:20200903220449j:plain



アルバム名は『ERA』ということで、RASの時代を作るというような気概を感じます。そもそもRASはそういった強気な姿勢のバンドなので、RASらしいタイトル――というよりチュチュらしいタイトルでしょうか。

アルバムは『Invincible Fighter』で御簾を上がります。RAS楽曲の中でも疾走感が強く、アルバム1曲目らしい曲ですね。シングルのレビューでも書きましたがあまりRASらしい曲ではなく、アルバム途中に置くのが難しい部分もあるのかもしれません。
2曲目の『A DECLARATION OF ×××』はイントロにタメがある曲なので、1曲目とのメリハリがついていて良い流れを作っています。


【ディスクレビュー】RAISE A SUILEN 3rdシングル『Invincible Fighter』 - 声優・バンドの深読み解剖研究室
【ディスクレビュー】RAISE A SUILEN 2ndシングル『A DECLARATION OF ×××』 - 声優・バンドの深読み解剖研究室


非常に重たいギターサウンドが光る新曲『SOUL SOLDIER』は、これが聞きたかったというRASにぴったりな曲です。Aメロからチュチュのラップも前面に出ていて、RASサウンドをたっぷり堪能できます。竿隊の重厚感溢れる楽曲で、頭と体が思わず揺れてしまいます。
ヘビーなサウンドですが、その後ろではキーボードがメロディアスに動いています。それが顕著なのが2番Aメロ。ここではキーボードがジャジーに展開され、お洒落なギャップを生み出しました。
演奏で僕が最も痺れたのはやはりギターソロです。ヘビメタさながらのギターソロに初見時は思わず声が出てしまいましたし、今でも聞くたび自然と笑ってしまいます。仮にも声優に弾かせるフレーズじゃありません。ライブでも当たり前のように弾いていましたが、小原さんだから弾くことができるフレーズです。

前曲ラストの静寂の中、Raychellさんのブレスから始まる『UNSTOPPABLE』、ピコリーモ的シンセサウンドとラップが際立つ『HELL! or HELL?』と、アルバム前半戦をキラーチューンが彩ります。
ここまでの5曲はライブで会場を一気に温めるために前半に配置されているような印象を受けます。実際に富士急ではアルバムの曲順通りにセトリが組まれましたが、やはりこの5曲を経過したときのテンションの上り方は凄まじいものがありました。RASのオリジナル曲はこのアルバムに収録された楽曲がすべてなので、最初から富士急ライブでそのまま演奏するのを前提に、アルバムの曲順も決まったのだと思います。


【ディスクレビュー】脳を揺さぶるデジロック、鮮烈なデビュー作 RAISE A SUILEN 1stシングル『R・I・O・T』 - 声優・バンドの深読み解剖研究室
【ディスクレビュー】つべこべ言わず拳掲げて頭振れ RAISE A SUILEN 4thシングル『DRIVE US CRAZY』 - 声優・バンドの深読み解剖研究室


アルバム中盤には『Takin' my Heart』と新曲『Beautiful Birthday』という、RASの中ではテンポの遅い聞かせる曲が並びます。
曲調のみならず歌詞も一貫して強い言葉が並ぶRASですが『Beautiful Birthday』では柔らかく優しい言葉が並んでいます。サウンドも力強さはあれど荒々しさはなく、繊細さを併せ持った楽曲と言えるでしょう。
作中でチュチュの誕生日にメンバー4人から作られ、後にチュチュがリリックとサウンドを付け足すことで完成した楽曲ですが、アニメでのRASのストーリーを語るには欠かせない曲です。アニメの内容に関わるので言及は避けたいと思いますが、RASのメンバーにとってどれだけチュチュに見いだされたことが大きなことだったのかが分かりますし、それに答えたチュチュの想いも感じ取れます。チュチュを筆頭にした各々のキャラクター性とアニメを知った上で歌詞カードと共に聞きたくなる曲ですね。


【ディスクレビュー】RAISE A SUILEN 3rdシングル『Invincible Fighter』 - 声優・バンドの深読み解剖研究室


アルバム終盤戦は『DRIVE US CRAZY』によりフルスロットルで幕を開けます。流れを変えるのに適した曲なので、アルバム1曲目や今回のような終盤の1曲目などの節目に置くと気持ちのいい曲です。


【ディスクレビュー】つべこべ言わず拳掲げて頭振れ RAISE A SUILEN 4thシングル『DRIVE US CRAZY』 - 声優・バンドの深読み解剖研究室


『!NVADE SHOW!』は『HELL! or HELL?』と同系統の曲ですが、こちらの方がよりめちゃくちゃに暴れまわっているような曲ですね。おもちゃ箱のような曲と語られていましたがその通りで、ヘビーなサウンドからメロディアスな部分、ぎらつくシンセやDJサンドがとめどなく溢れてくる、非常にライブ映えする曲です。
音で言うとヘビーさはありますがRASの中ではポップさもあり、その点も『HELL! or HELL?』とは少し異なっている部分です。ポップさが歌詞にも表れていて、普段強い言葉が並べられるRASの歌詞ですが、今回は遊び心を感じる言葉運びです。普段よりもチュチュの年相応の部分が出ている気がします。

続く『REIGNING』も所謂RASっぽい音ではなく、もっと落ち着いた曲で全体的に音にまとまりがあるように聞こえます。この曲はRASの結束を表現した曲なので、いつもの重厚感があって暴れまわるような曲ではなく、サウンドの一体感を感じられる曲になったのかもしれません。
この曲ではチュチュのラップも他の曲とは様相が異なり、勢いで歌うのではなく読み上げるように繊細な歌い方をしています。普段のラップは言い方が悪いですがクソガキ感がありますが、今回は大人っぽいものになっていて新たな一面が垣間見えました。
特に注目したいのはやはり歌詞でしょうか。僕は舞台を見ていないのですべては拾えていないと思いますが、最も大きなポイントは「We are RAISE A SUILEN」という言葉がサビで声高々に歌われることでしょう。外に向けた強気の態度を発信しているRAS――チュチュがRASの結束を曲として発信するにまでなったのは、RASの今後を語る上で外すことができない曲になったと思います。
また「世界よ僕らとなれ」とサビラストに歌っているのも大きなポイントです。アルバムを締めくくる『R・I・O・T』では「僕らの音は世界へと憑依する」と歌っていました。時は進み、RASが世界に立ち向かっていくのではなく、世界の方をRASに引き寄せる強さを得るに至りました。今後のRASの根幹を成していく重要な曲です。

アルバムラストはRAS屈指の盛り上がり曲である『EXPOSE ‘Burn out!!!’』で盛大に盛り上げて道を作り、初のオリジナル曲であった『R・I・O・T』でアルバムは締めくくられます。『R・I・O・T』で終わっていくのは誰しも考える、ごく自然な流れだと感じます。


【ディスクレビュー】RAISE A SUILEN 2ndシングル『A DECLARATION OF ×××』 - 声優・バンドの深読み解剖研究室
【ディスクレビュー】脳を揺さぶるデジロック、鮮烈なデビュー作 RAISE A SUILEN 1stシングル『R・I・O・T』 - 声優・バンドの深読み解剖研究室


アルバム全体を通して考えると、始まりから終わりまで違和感なく自然と聞けてしまうアルバムだったと思います。収録時間が1時間を切っているのも良いですね。楽曲のテンポが基本的早いのもあり、時間以上の早さで聞けてしまうのではないでしょうか。
新曲もそれぞれ粒ぞろいで好印象ですし、RASのストーリーの区切りとなるアルバムだったと思います。RASの曲がすべて収録されているのもあり、入門編としてこれ以上ないアルバムです。
しかしその一方で、アルバムとしての面白みには欠けていたのかなとも思います。無難にまとまっているとでも言いましょうか。もっと一枚を通して聞いた時の発見や面白み、曲と曲の関係性をアルバム内で再構築してくれれば、より面白いアルバムになったのかなと思います。
ポピパやRoseliaのアルバムにはそれがあったので、次回作でそういったものが見られたらいいなと思います。曲とライブの強さは申し分のないRASですが、まだまだ伸びしろを感じるアルバムでした。

ERA【Blu-ray付生産限定盤】

ERA【Blu-ray付生産限定盤】

  • アーティスト:RAISE A SUILEN
  • 発売日: 2020/08/19
  • メディア: CD
ERA【通常盤】

ERA【通常盤】

  • アーティスト:RAISE A SUILEN
  • 発売日: 2020/08/19
  • メディア: CD


アニメソングランキング