声優・バンドの深読み解剖研究室

知識のない音楽オタクが声優アーティストやバンドを深読みする。バンドリを始めに声優アーティストやバンドのディスクレビュー、ライブレポ中心に書いていきます。

【ディスクレビュー】1年半に及ぶポピパの進化を記録した必聴盤 Poppin'Party 2ndアルバム「Breakthrough!」

新型コロナウイルスの影響を受け、3週間の発売延期となったPoppin'Partyの2ndアルバム『Breakthrough!』が遂に発売されました。前回発売されたアルバムはこれまでの楽曲を詰め込んだだけの、所謂ベスト盤的な内容でしたが、今回はしっかりと一つの作品としてアルバムが考えられています。今作は本当の意味での1stオリジナルアルバムと言えるでしょう。

ある種真価が問われる今作ですが『Breakthrough!』というタイトルからは、この作品から更に新しい、進化したポピパの姿を見せていくという決意を感じます。

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そんなアルバムの口火を切るのは表題曲『Breakthrough!』。ピアノで始まる静かなイントロからは「これから始まる感」があり、開幕1曲目らしく爽やかかつ開放感のある曲です。
ポピパの十八番であるガールズロックとメンバー全員ボーカルが盛り込まれた曲ながら、随所にSILENT SIRENらしさ」も感じます。サイサイとのコラボがポピパのロックに良い変化を与えたように感じます。そういう意味でもこれまでのポピパからブレイクスルーしています。


そのバトンを受ける王道ガールズロック『NO GIRL NO CRY』は、まさしくサイサイとのコラボ曲でした。今回はポピパのソロバージョンでの収録ですが、アルバムの流れとして美しいと思います。欲を言えば1曲目の余韻をもう少し減らして、間髪入れずにNGNCが始まるとより良かったです。

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シリアスなサウンドを響かせる『イニシャル』は、バンドリ3rdシーズンのOPを担当した楽曲で、これまでのポピパ楽曲の中でも特にヒリヒリとした空気を持っている曲です。以前のレビューでも書いたように『ティアドロップス』や『Time Lapse』とは似て異なる新たなポピパの一面であり、ブレイクスルーの一つでもあったという、このアルバムのテーマにぴったりの曲です。

【ディスクレビュー】はじまりへの回帰はひとつの区切りなのか Poppin'Party 15thシングル『イニシャル/夢を撃ち抜く瞬間に!』 - 声優・バンドの深読み解剖研究室


ここでこれまでの流れを一変させる新曲『Hello! Wink!』が投入。ハロウィンがテーマの曲となった曲で、トリッキーな展開や少しミステリアスなサウンドがアルバムに新風を吹き込みます。
こういった曲はハロハピやパスパレがやりがちですが、上物のキーボードがハロウィンの空気感を演出する中、それ以外はガッチリとしたバンドサウンドで構成されている辺りから、上述した2バンドより バンドの音であることに対して拘ったサウンド だと感じます。こちらもこれまでポピパにはなかった楽曲で、やはり既存のポピパ像からブレイクスルーした曲です。

また、まるで何かに追われているかのような焦燥感が根底に流れていて『イニシャル』からの流れとして綺麗に感じます。


余韻を感じる中、ピアノの旋律と共に始まる『Step×Step!』は3期作中で沙綾が作成した曲として登場した曲。バンドがやりたいという夢に踏み出せないロックの背中を押すために作られた曲ですが、かつて同じようにバンドがやりたい気持ちを押し殺していた沙綾だからこそ書ける、実体験に伴った歌詞が特徴的です。

印象に残るフレーズとして 「シュシュ」 が出てきますね。これはロックが普段付けているシュシュを表しているのは明白で、作中でも「シュシュを外す」という行為はロック自身の強い想いに従って行動を起こす時に描かれました。
そしてシュシュを付けているのはロックだけでなく、この曲を書いた沙綾も普段からシュシュを付けています。ガルパを始めとした作中でもシュシュに関するエピソードがいくつか存在し、ポピパは沙綾の提案でお揃いのシュシュを付けていることもありました。

病弱な母を気遣ってバンドをやらなかった沙綾ですが、その母もまたシュシュを付けています。ある意味で彼女にとってのシュシュは、自身を縛る象徴でもあり、それを外す行為を夢に向かって走り始めることと結び付けているのです。言い方が悪いですが、ロックもシュシュを 「自身を朝日六花に縛る」象徴にしていたように感じます。沙綾とロックはそういった面でも重なる要素を持っていた訳です。


夢に向かってステップしたなら、次はジャンプです。そんな訳でやってきた『Jumpin'』は、まさしく飛ぶような盛り上がりの曲ですが、曲の入りが静かなのでしっかりとアウトロの空気を引き継いでいます。『Step×Step』の流れを感じたまま聞くと、より一層希望に満ち溢れた曲として響いてきます。

【ディスクレビュー】Poppin'Party 13thシングル『Jumpin'』 - 声優・バンドの深読み解剖研究室


ここでしっとりとしたミディアムテンポのナンバーである『White Afternoon』が配置され、アルバムの流れをまた一つ変えていきます。曲順を見たときには『Jumpin'』の後は少し違う気もしていましたが、聞いてみるとそれほど違和感がなかったです。
少し大人っぽいポピパの演奏や香澄のボーカルが楽しめる曲であり、午後の紅茶とのCMタイアップ曲でもあったという、二重の意味でブレイクスルーした曲であったと思います。

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8曲目『キラキラスター!』はリアル脱出ゲームとのコラボで、クリア後にこの楽曲が聴けるという仕組みになっていました。勿論歌詞には謎解きを連想させるワードが散りばめられていますが、歌詞を読んでいると何処となく香澄とランダムスターの出会いや、メンバー達との出会いも連想されます。
曲としてもポップで聞きやすく、よく晴れた空の下、商店街みたいなところで流れているのが似合う曲となっています。個人的にサビ前の部分がみんなの足並みを揃えているようでお気に入りのポイントです。


アルバムもいよいよ終盤に差し掛かり、ポピパの激情型楽曲最高傑作である『Returns』
我々の感情を揺さぶります。後半戦の最初にこの曲を置くことでグッと感情が引き寄せられ、僅か2分とはいえ1時間超えのアルバムを、最後まで中だるみさせることなく聞かせることに成功していると感じます。


『Returns』が来たのであれば、やはり次に聞きたいのは『Dreamers Go!』でしょう。
『Returns』は感情の入り方がものすごい曲なため、曲に向き合うほどこちらも入れ込んでしまう曲です。その後に高揚感に溢れ、聞いていてワクワクしてくる『Dreamers Go!』が来るおかげで、楽しい気持ちに引っ張り上げられます。この後に残る曲を考えても『Returns』の感情を引きずったまま進むのは不自然ですし、やはりポピパのアルバムならば最後は明るく終わりたいですよね。そういった意味でもこの曲の置きどころとしてはバッチリじゃないでしょうか。

【ディスクレビュー】Poppin'Party 14thシングル『Dreamers Go!/Returns』 - 声優・バンドの深読み解剖研究室


満を辞しての登場となったキズナミュージック♪』は2ndシーズンOP曲であり非常に盛り上がる曲ではありますが、メロディーに切なさが乗っていて終わりを感じさせる曲でもあります。アルバムのエンディングに向けて、もうすぐ終わってしまうという空気感を演出しつつも最後のブーストをかけてくれています。

【ディスクレビュー】ポピパの魅力が凝縮された、絆と青春のシングル Poppin'Party 12thシングル『キズナミュージック♪』 - 声優・バンドの深読み解剖研究室


『ミライトレイン』は3rdシーズン最終話において、武道館で披露された新曲です。「未来行きの電車」にみんなを乗せて、いつまでもどこまでも一緒に走り続けるという希望に満ち溢れた曲です。
作中では出番直前にりみが「終わることを恐れる」というシーンがありましたが、この曲はそれに対する「終わりなんてない!」というアンサーでもあります。「人の夢は終わらねぇ」と言えば某海賊漫画の名言の一つですが、まさしく香澄も同じことを考えているようです。

また、電車といえば香澄のキャラクターソング『どきどきSING OUT!』とリンクします。ここでキャラソンの符号を回収するのはニクいですね。
ただ 『どきどきSING OUT!』で歌われた電車と『ミライトレイン』で歌われる電車は同じものではありません。前者は「「涙→キボウ」電車に乗って」いて、これには「キボウ」という終点があります。一方『ミライトレイン』では「未来行きの電車」という、無限に続く終わりのない電車に乗っています。
加えて『どきどきSING OUT!』では「前だけ見つめてキミを待つよ」と歌っていて、1期における猪突猛進な香澄を周りのみんなが追いかけるといったイメージが思い浮かべられます。それが『ミライトレイン』では、前だけを見ている訳ではなくなり「ホームに立つキミ」のことも見ています。更に言えば同じ電車にキミと乗り「同じ景色を見つめて」いるんですよね。この辺りの変化から、1期を経た香澄の成長を感じ取れます。


アルバムを締めくくる最後の曲は勿論『夢を撃ち抜く瞬間に!』です。3rdシーズンのED曲であり、バンドリの名を冠した非常に象徴的な曲で、これ以上にラストにふさわしい曲はありません。
とても集大成感が強い曲ですが、すごく名残惜しい気持ちをくすぐられるメロディーをしています。アニメ視聴時にも「あぁ、終わっちゃった〜」と感じさせてくれていた曲でしたが、このアルバムにおいても アルバムが終わってしまう名残惜しさや勿体なさを刺激してくれます。思わずもう一回聞きたいと思わせる曲となっていて、そのままアルバムを頭からもう一度聞きたくなります。
そしてこの曲の余韻を感じながら改めて聞く『Breakthrough!』のイントロは、最初に聞いたとき以上に「始まる!」という昂りを大きくしてくれます。

【ディスクレビュー】はじまりへの回帰はひとつの区切りなのか Poppin'Party 15thシングル『イニシャル/夢を撃ち抜く瞬間に!』 - 声優・バンドの深読み解剖研究室


僕がアルバムを聞くときに大切にしている要素が3つあります。一つはアルバムを聞いていて長いと感じないか。二つ目が曲順やアルバムの構成にしっかりと意味があるか。三つ目が最後まで聞いたときに、もう一度頭から聞き直したいと直感的に思えるか。これが揃ったアルバムはとてもよく出来たアルバムだと、僕の基準では思っています。
この『Breakthrough!』というアルバムは、それらを満たしたとても満足度の高いアルバムでした。前回のアルバムから約1年半の間に製作された13楽曲ですが、その多くが新しいポピパ像に挑戦したものや、これまでのポピパ像をより磨き上げた楽曲でした。サイサイとのコラボやロックフェスの出演など、様々な経験を経たポピパの進化を堪能できる一枚だったと思います。
これだけシングル曲が多いと普通であれば美しい構成に作ることは大変だと思うのですが、全てがバンドリというコンテンツの中で結び付いた曲であったために、その障害もクリアしやすかったのかもしれません。
この後もRoselia、RASとアルバムのリリースが続きますが、そちらも俄然楽しみになってきました。

まだまだいつも通りの日常は帰ってきませんし、ライブも難しい状況ではありますが、良い音楽を聴いて乗り切りましょう。
それでは! 

Breakthrough!【Blu-ray付生産限定盤】

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  • アーティスト:Poppin'Party
  • 発売日: 2020/06/24
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Breakthrough!【通常盤】

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