エンタメ感想製作所

音楽や映画、ゲームなどの感想・レビューを素人なりに投稿。専門知識はないけど好きな気持ちは皆平等。

ポッピンQを観たなら漫画版も読んでみよう

 

こんばんは、僕です。

以前書いた映画『ポッピンQ』の感想記事が意外と好評らしいです。ポッピンQを観ていない友人からも面白かったと言ってもらうことができて、読み物としても悪くない出来にできていたのかな、と思うと嬉しい限りです。皆さんはポッピンQを観に行かれたでしょうか?

 

shun0017.hatenablog.com

 

この記事ではポッピンQについて、こんな風に書いていました。

とにかく「ここをもっと説明してくれれば……」や、「ここをもっと掘り下げてくれれば……」が多いのが残念でした。

【ネタバレ注意】『子ども』からの卒業、『大人』への第一歩 ポッピンQ レビュー・感想 - 備忘録と夢想録

 実はこの残念だった要素を補ってくれるかもしれない漫画が連載されているということを、つい最近知りました。なので少し紹介させていただこうと思います。それがこちら。

comic.webnewtype.com

こちら、『ポッピンQ reverse』という漫画です。 この漫画は劇場ストーリーで描かれたなかった前日譚や裏側を描いていく漫画です。つまり、伊純以外のキャラクターの掘り下げや説明不足だった点についての補足が、この漫画では行われていっているというわけです。現在は4話まで公開されていて、1〜3話ではレミィが声を失った理由や時の種が砕けてしまった理由、伊純以外の4人が時の谷に来る前、合流前の出来事が描かれています。

この漫画がどこまで続くのかは分かりませんが、現段階でもいくつかの疑問点に対するアンサーが提示されており、続いていけば大人沙紀のことやレノンのことも触れてもらえるかもしれません。伊純や沙紀以外のキャラクターの過去についての詳しい描写も期待できそうです。

本音を言えば、この漫画で描かれることは映画本編で描いてほしかったです。しかし、こういった形で映画を観たファンの疑問・不満に答える術があるというのはありがたいことです。しかもネットから無料で読めるので手軽でいいです。

4話まで読んだ僕の感想としては、映画の穴を埋めてくれる形で面白い漫画だと思います。やはり腑に落ちなかった点が解消されるのは気分がいいですし、そこが補われることで面白さも増すのではないでしょうか。重要な黒星先生のイラストにも近い絵で描かれているため、大きな違和感も感じないと思います。というか、かなり頑張って似せていると思います。ポッピンQを観た人には是非とも読んでいただきたい漫画です。ポッピンQを観ていない人にとっては、本編の展開に沿って描かれているためネタバレになってしまう点もありますが、読んでみてから本編を観るのもいいのではないでしょうか。

 

さて、ポッピンQはそろそろ劇場公開も終わる頃合いだと思いますが、最近意外に人気あるのでは?と思うことがあります。映画館への人の入りは確かに今ひとつだったと思うのですが、ポッピンQ関連のイベント(キャスト出演の上映会・製作陣のトークショー等)は盛況らしいのです。ひょっとすると次回作を期待してもいいんじゃないかと淡い期待を抱いています。次回作が作られる際には、今作で悪かった点をしっかり直してほしいですね。

 

それでは、今回はそんなポッピンQの漫画のお話でした。映画本編の悪い点がなくなるわけでは当然ありませんが、ポッピンQを観たのなら漫画版にも目を通してみてください。お疲れさまでした。

内田真礼1stミニアルバム 『Drive-in Theater』ディスクレビュー

こんばんは、僕ですよ。
今回はディスクレビューを書きます。ここ最近こんな感じでレビューしか書いてないんですけど、その内雑談的な記事も書くと思うんでしばしお付き合いを。
今回ディスクレビューを書くCDは、声優の内田真礼さんの1stミニアルバム『Drive-in Theater』です。購入したのは発売日の翌日だったのですが、大学のテストがあったりした関係でようやく書き始められます。発売から少し時間が経ってしまいましたが、既に購入した方もそうでない方にも何かの参考になれば。


Drive-in Theater

Shiny drive, Moony dive

記念すべき一曲目を飾るのは、僕が愛するUNISON SQUARE GARDENのベースでお馴染み、田淵智也氏作詞作曲のアメリカン・テイストで非常にキャッチーな曲です。編曲もやしきんという黄金コンビ。田淵智也提供曲っていうのは聞いたらすぐに分かるんですが、この曲もご多分に漏れず聞けばすぐに分かるご機嫌なナンバーです。すごく明るくポップな曲で、聞いていてとても楽しいですね。一度聞けばすぐに頭に入ってくるキャッチーさは流石の一言。
音の数も豊富で、ホーン隊や自動車のクラクションの音なんかも入っています。めちゃくちゃにぎやか。聞いていると自然と体が動いてしまう感じです。アルバムの一曲目ということで、このアルバムの方向性を決める大事な曲だったわけですが、「なんかすごく楽しい時間が始まったぞ!」というワクワク感を与えてくれる素晴らしい曲だと思います。

この曲は『世界旅行』をテーマにしたような曲で、歌詞にもそれが存分に現れています。世界中の有名な観光スポットを歌詞に織り込んだり、車で世界中を旅しているかのような歌詞はただ言葉を羅列しているだけじゃなく、『声優』内田真礼の声を通すことで可愛らしさを増してくるような、不思議な言葉選び。田淵節全開のどこかつかみどころのない、聴き心地や音の気持ち良さを重視したぶっ飛んだ歌詞は、この曲でもフルスロットルです。彼が書く歌詞の尋常ではないフックの効き方は、ユニゾンよりもこういった声優への提供曲の方が実感できますね。
サビの一節目の『Shiny Shiny ドライブ Moony Moony ダイブ』という歌詞なんか、何度も繰り返されることもあって聞いているだけですんなり覚えてしまいます。僕が特に天才だと思ったポイントはCメロの『ポニーじゃなくてグランドキャニオン』という歌詞。そんな歌詞何食ってたら思い付くんだ。普通思いついても歌詞にしようなんて思わないよなって言葉を歌詞にしちゃうんだからすごい。

田淵智也の書く『アニソン』の世界観にがっちりハマるのは、内田真礼戸松遥のような明るくて楽しい曲が似合う人だと思うので、やはりこのタッグは強いなぁと。

モラトリアムダンスフロア

この曲は『君じゃなきゃダメみたい』やTom-H@ckとの音楽ユニットOxTで有名な大石昌良氏作詞作曲の一曲。僕は大石さんの曲も大好きなのでどんな曲が来るのかなぁと楽しみにしていましたが、これがまたかっこいい。「こんな曲も歌えるのか!」と、内田真礼の新たな一面を垣間見たような気がします。
曲としては和テイストな合いの手やバックコーラス、かけ声を用いたダンサブルな曲。これが面白いんですよね。“ダンスフロア”なんてタイトルがつくように所謂『和ロック』な曲ではないんですが、バックで流れる小気味いい和テイストコーラスが脳裏に刻みつけられて、一曲目とはまた違う角度から強い印象を残していきます。聞き終わった後にしっかり“和”な印象が残るんですよね。なんというか、“お祭り”みたいな曲です。真礼さんは歌舞伎が好きらしいのでその辺りのエッセンスも加わっています。

この曲は歌詞もまた面白い歌詞してるんですよねぇ。良い意味でめちゃくちゃというか。“やぐらの太鼓”という歌詞が出てきたかと思えば、次には“シンデレラ”が出てくる。普通この二つのワードは共存しませんよ。繰り返される『ドンスタッ! ドンスタッタッダミュージック!』『ノックノック! ノッコンダハービッ!』という歌詞も頭に残りますし、前半二曲でがっちりファンの心を掴みに来た感じがします。

あ、あとこの曲は何度かしゃくりあげて歌うところがあるんですけど、そこがいい具合にフックとなって耳に残るんですよね。癖になる曲です。

Moment

ここまでの二曲の跳ねるようなアップテンポでインパクトのあるポップさとは一転、大人な聞かせる曲のゾーンに突入です。この曲も和テイストの曲ですが、モラトリアムダンスフロアとは違って和風な音というものは出てきません。エレクトロニックなバラード曲で、曲の骨組みを和風なものにしたような曲です。ちょっと歌謡曲っぽさも感じますね。

曲を聞いた後に歌詞を読んでみると「いいなぁ」と染み込むような、良い歌詞をしていると思います。和テイストな曲の歌詞ってなんだか切なくていいですよね。ちょっと涙を誘うような儚さがあって、曲調と相まってエモさを感じます。

5:00AM

続けて『Moment』以上に大人っぽくしっとりとしたR&B調のバラード、『5:00AM』へ。読み方は『午前5時』でいいみたいです。真礼さんが午前5時が好きらしくて、そこから生まれた曲だとか。午前5時が好きってなんなんだ。何か興味深い理由とかあるのかなと邪推してしまいますが、なんとなくフィーリングな気配がします。
僕にとってはこの曲が、アルバム通して二度目の「こんな曲も歌えるのか!」ポイントでした。明るい曲だけじゃかくて、こういう大人っぽい曲にも合う声なんだなと。声優ソング感が全く感じられない、それこそテレビによく出るポップスシンガーが歌いそうなバラードだったという点も少し驚きました。割と声優ソングでこういう曲を作るっていうのは挑戦なんじゃないかなと。

この曲は真礼さんも作詞を手がけているということで。どれくらいの範囲を担当したのか、そもそもどういう形式で作ったのかということが分からないので細かいことは言えませんが、真礼さんなかなか良い歌詞書いてると思いますよ。個人的には『ピアスを開けたきっかけ』という歌詞が好きです。この曲の悲しげな空気感を増長させてくれるといいますか。女性がピアスを開けるきっかけ、色々あると思いますがこの曲で歌われると切なさを感じます。

どうでもいいことですけど、バックで鳴り続けてるトライアングルっぽい音が好きです。

クロスファイア

黒須さんが作ったクロスファイア……。ラジオで真礼さんが言ってました。「あ、これそっちも同じこと思ってたんだ」と、なんだか少し安心しました。
ここでアルバムの流れを逆になぞるように、またしてもドラムがドンドコと鳴り響く賑やかな曲。真礼さんが野球好きということで、野球をイメージした曲になっています。もちろん歌詞には野球にまつわるフレーズがたくさん。その中に“恋”の要素も入ってきています。気になる彼と一緒に野球を見に来た、みたいなシチュエーションなんですかね。
すごいどうでもいいことですけど、Cメロで“延長”って歌ってるところが最初“炎上”に聞こえて笑ってしまいした。負けてんじゃんと。

この曲はバックで合いの手が賑やかに聞こえる曲なので、ライブが楽しそうです。『飛ばせ 飛ばせ 疾風の如く』の辺りはスタンドで応援してる感じを味わえるかも。今回のアルバムはライブが楽しみな曲が多いですね。
これは僕だけなのかもしれませんが、この曲もなんだか和っぽくないですか? サビの辺り凄くそんな風に感じるんですが。なぜかと言われると上手く説明できないのですが……。

Smiling Spiral

いよいよアルバム最後の曲。作詞作曲は我らが田淵智也ということで、このアルバムの頭とトリを田淵が務めてるのは僕としては嬉しい限りです。個人的にはこのアルバムで一番好きな曲でございます。
ハイテンションで軽快なイントロから始まり、Bメロでは少しオシャレな展開に。そしてサビで再び爆発といった、単調な展開ではない幅のある展開はやはり田淵智也ならではなのでは?

この曲はコール&レスポンスが用意されていたり、合間合間にコーラスが差し込まれたりと非常にライブで盛り上がる曲なのは間違いないでしょう。これも田淵のお得意と言いましょうか。ユニゾンでは徹頭徹尾ファンを煽るようなことはしない彼ですが、提供曲ではしっかりこういった要素を抑えてくるのがすごい。この超ポジティブコーラスやコール&レスポンスは、ライブで聞けば自然と元気が湧いてくる予感がします。

例によって歌詞の話なんですが、凄くいいんですよねやっぱり。めっちゃ前向き。真礼さんの歌が交わることで、まさしく『SmilingがSpiral』する一曲です。超楽しい。
それにしても、『みんなの「がんばって!」が聞こえたから また強くなれたよ』ってめっちゃいい歌詞じゃないですか? ファンからの声援を支えに強くなった姿を、このアルバムで彼女は見せてくれているのではないでしょうか。凄く楽しい曲のはずなのに、どこか泣けてくる。その理由はサビのこの歌詞にあるのかも。
実はこの曲、1stフルアルバムの『PENKI』のリード曲である、『Hello,future contact!』との繋がりがあるんですよ。『Hello,future contact!』では“Happy search”=“幸せを探す”ことをしていましたが、この曲では『お次の種目はHappy searchです これは、みんな楽勝ですね!』と歌い上げます。“内田真礼”というシンガーの成長、そしてファンとのここまでの歩みを、この曲では巧みに表現しているのではないでしょうか。やっぱり田淵は天才!



さて、いかがでしたでしょうか? 総評としましては、“内田真礼らしさ”が詰まりながらも新たな側面を見せつける、内田真礼の次のステージを予感させるアルバムだったのではないかと思います。
従来の彼女らしさが光る『Shiny drive, Moony dive』や『Smiling Spiral』といった楽曲達も、これまで通りではなく更に磨きのかかったものになっていたと思います。これまでの歴史を受けて、次の進化を感じさせてくれました。
『5:00AM』のような大人っぽい新しい一面を見せつつ、『モラトリアムダンスフロア』のような変化球も織り交ぜられており、この先真礼さんの活躍と進化が楽しみで仕方ありません。まだ買っていないという方は、ぜひご購入を。絶対に損はしないと僕が保証します。
ちなみに僕はアルバム先行で応募した2ndライブに当選したので、来月実際にこれらの楽曲達を楽しんできます! まさか当たるとは思ってなかったから金がヤバイ! 真礼さんのライブは今回が初めてなので少々緊張しますが、もし行くという方がいましたらよろしくお願いします。話しかけてやってくれてもいいんですよ。僕は2日目26日にいますからね。

それでは今回のディスクレビューはこの辺りで! さよなら!

【ネタバレ注意】『子ども』からの卒業、『大人』への第一歩 ポッピンQ レビュー・感想

どうも、僕です。今回の記事は映画の感想になります。折角ブログがあるんだし、ディスクレビューなんかもやったのでこういうことにも挑戦してみます。当たり前ですがネタバレ注意です。

今回僕が見た映画は東映アニメーション60周年記念作品の『ポッピンQ』です。キャラクター原案が僕の大好きなゲーム、サモンナイトを手掛けた黒星紅白先生ということで気になっていた作品です。世間での評価がどんなものかと様子を伺っていたところ、話題にはあまり上がっていませんがそれなりに評価が良かったこともあり、実際に見に行ってみました。見に行ったのが昨年の26日なので、だいぶ時間が経ってしまいましたが書いていこうと思います。


良かった点

キャラクター

まず、登場するキャラクターは皆可愛くて良かったと思います。メインキャラクターの五人はそれぞれ個性がありますし、好感が持てるキャラクターです。声優さんも良い演技をしていました。
そしてなんといっても黒星紅白先生のデザインが素晴らしい。黒星絵がしっかりと再現されていて、黒星先生のファンなら満足できるのではないかと。
今作は主人公達のパートナーに位置する同位体という存在が登場します。この同位体達はポッピン族というマスコット的立ち位置のキャラクターなのですが、これが可愛い。子ども受けしそうです。ぬいぐるみとか出したらちょっと売れそうかも。

ダンスシーン

今作は『時の谷』という異世界に飛ばされた主人公達が、世界の時間の崩壊を防ぐためにダンスを踊るという要素が含まれています。このダンスシーンは3DCGにより描かれているのですが、これがすごい。正直絵のアニメーションとの違いはほとんどありません。僕は結構CGに敏感というか、どうにも苦手で好きになれないところがあるのですが、ポッピンQのCGは非常に自然ですんなり受け入れることができました。ひょっとしたら初めてのことかもしれません。個人的には、折角ならばもっとたくさんダンスシーンを入れて欲しかったなと思います。

テーマ・設定

このポッピンQ、様々な要素がごった煮にされたような映画です。主人公達の卒業物語や青春劇にダンスシーン、異世界要素やマスコットキャラクター、果てはバトルシーンと盛りだくさん。ポッピンQはプリキュアに近い作品だと思います(実際に今作の監督は、プリキュアシリーズを手掛けた宮原直樹さんが担当しています)
まるで闇鍋のような映画で、作品の密度は大変濃いと思います。このそれぞれに光るものがあるため、これらの融合により生まれた個性は強烈です。プリキュアに近い作品とは言いましたが、特有の個性をしっかり持っていると思います。


さて、ここまで個人的に良かった点を書きましたが、正直良かった点以上に悪かった点の方が目立っていました。僕自身はそれほど嫌いじゃないのですが、やはり非常に惜しい・残念だと言わざるを得ないです。なのでここからはどこが悪かったのか、どうすればより面白かったかについて書いていこうと思います。

悪かった点

圧倒的な説明・掘り下げ不足

全体的に唐突すぎる点が多かった印象です。なんでそうなったの?と思うポイントが複数ありました。例えば、レミィが声を出せなくなった理由や、声が戻った理由。突然ラスボスとして出てきた大人沙紀のこと。キグルミとは結局どういう存在なのか等々……。
もちろん一から十まで全てを説明する必要はありません。ですが今作に関しては「これを描写したならちゃんと説明してよ」と思うものが多かったわけです。パンフレットにもその辺りは書いてあるわけではないので、どうしてもモヤモヤ感が拭えません。
それと、各キャラクターの掘り下げも浅かったです。主人公の伊純は流石に掘り下げられているのですが、他の四人はかなり浅いです。沙紀だけはラストに関わるため多少掘り下げられましたが、やはり浅い。伊純達と和解に至るまでの感動があまり感じられませんでした。もっとこのシーンで感動できたんじゃないかと思ってしまいました。
なぜこうなったのかという原因の一つは、恐らく続編ありきで作っていたからだと思います。これは映画をスタッフロール後の最後まで見ていれば誰しもがそう思うでしょう。なにせ予告映像のようなものまで作られているのですから、製作陣としてはそのつもりでいたのでしょう。これで本当に続編が作られるのなら回収されるものもあるでしょうし、ある程度許容はできます。しかし率直なところ、興行的には続編を作るのは難しそうですし、最初から二部作計画でもない限り続きは作られないんじゃないかなと。そうなるとかなり不完全燃焼な感想になってしまいます。

尺不足

これは上記の内容とリンクしますね。尺がもっとあれば、色々と説明することもできたでしょう。この尺だからこその密度の濃さやスピード感は間違いなくあるのですが、総合的に考えるとどうしても尺不足。やはり主要キャラ五人の掘り下げを十分にできていない点が痛いですね。
冒険を通じて五人に芽生える絆が重要なポイントの一つだと思うのですが、掘り下げ不足なせいで突然仲良くなったような印象を覚えてしまいます。テーマである『卒業』についても、伊純と沙紀以外は悩みや過去の描写が少ないので、克服した・乗り越えたという感動が薄いです。
また、伊純達と心の繋がったパートナーであるポッピン族の同位体達も、個人的にはあまり良くない要素だったかもしれないと感じます。彼等の存在が伊純達の心理描写をざっくりと省いてしまっているんですよね。
同位体達は伊純達と心が繋がっているので、何を考えているのかや過去のことが筒抜けです。なので伊純達の心の機微を全て説明してしまうのです。そりゃ彼等が全て説明してくれるのなら、心の動きや過去話をカットすることができるので、尺的には短くできていいでしょう。製作陣としても直接同位体の口で話させてしまえばいいのですから楽なのは間違いないです。でもその代償として、我々は各キャラクター達に感情移入することが難しくなってしまうわけです。一番の魅力であるはずの伊純達の友情や卒業譚が薄っぺらく思えてしまってもおかしくない状況になっていたと、僕は思います。

ターゲット層が分からない

これは興行的側面の話になってきますが、いまいちどの層をターゲットにした作品なのかが分からないんですよね。絵や声優なんかはオタク向けなんですけど、内容自体は幼少期にプリキュアを見てきた世代に向けたものでもあり、設定的には今まさにプリキュアを見ている子ども世代にも向いているように思えます。
これを好意的に捉えれば、先ほど言ったように様々な要素が詰まった非常に内容の濃い作品ということにはなります。ですが明確にターゲット層を絞らなかったことで、人の入りはいまいち良くない状況になってしまいました。幅広い層が楽しめる作品だとパンフレットには書いてありましたが、正直現実はそんなに甘くないわけです。ヒットさせるためにはやはり、狙う層を明確にするべきなんじゃないかなと。余程素晴らしい作品でもない限り、層を選ばずヒットするなんてことないですよね。ちなみに僕は極音上映を見てみたかったので立川に行ったのですが、一番近所の映画館の席を確認した時は夜の部に一人いるだけで、あとは全て空席になっている始末です。
まぁこれは時期も悪かったかなぁとも思いますけどね。なにせアホほどヒットしている「君の名は。」の後ですし(おまけに向こうもまだ上映中) また、折角『卒業』がテーマの作品ですし、冬じゃなくて春に上映すればまた少し違ったのかなという気もします。
あと、どうでもいい話なんですけど、上にある二つ目の画像のキャッチコピーが全然重要じゃないというか、キャッチコピーにするようなものじゃないってのもブレてるなぁという感じ。

総評

星をつけるとしたら二つ半ってところですかね……。僕は嫌いじゃないというか、むしろ好きな方ではあるんですけれども。やっぱり内容は濃くても細部がスカスカな感じで、見た後にどうしても腑に落ちない感覚を覚えてしまうのは良くないです。
再三述べてますが、やっぱり尺が足りてないのが悪い。この尺でやるならこんなに詰め込むのは厳しかったのかもしれません。ダンスと戦闘の両立もあんまり上手くいってなかった印象ですし、レノとか別にいらなかったんじゃないかな。物語の展開や構成が悪かったのが惜しいところ。とにかく「ここをもっと説明してくれれば……」や、「ここをもっと掘り下げてくれれば……」が多いのが残念でした。
ですが光るところや魅力も当然あったわけで。上手くやればもっと面白くできたんだろうなぁと思うと、よりもったいないと思ってしまいます。掘り下げ不足で伝わりにくいですがキャラクターは魅力がありますし、ダンスで世界を救うというのも面白い。何より黒星先生のファンの方は見に行っても損はないんじゃないでしょうか。
個人的にはストーリーの流れといいますか、中学校卒業を目前に控えた伊純達がこの冒険を経て、『子ども』だった自分から卒業し、『大人』への階段を一歩登るという卒業譚はとても好きでした。思春期ならではの心の揺れ動きを、僕はもう懐かしむ側に足を踏み入れてしまっています。しかし今まさに伊純と同世代の学生さんには、きっと刺さるものがあると思います。
正直作ってくれるのなら是非とも続編が見たいです。折角仲良くなった五人の絡みをまだまだ見ていたいと素直に思いました。嘘予告的なのも面白そうな内容でしたしね。本来なら同位体との友情も描きたかったのかなと、あの映像を見て思いました。そうすれば彼等を余計だったのではないかと思わなくて済んだのですが。


さて、最終的なまとめといきましょう。本当に繰り返しになって申し訳ないのですが、本作は尺がないのに無理やり内容を詰め込みすぎ、説明の手が回らず逆にスカスカになってしまったダイヤの原石、といったような映画です。魅力的な点・面白い点は確かに各所にあって、素材としては申し分ないものでしたが、それを上手く生かしきれなかった惜しい作品と言えると思います。本当にもっと掘り下げをして欲しかった……。それに尽きますね。
興味のある方は彼女達の卒業譚と、新たな物語のはじまりをご覧になってはいかがでしょうか。

劇場アニメ「ポッピンQ」 | 公式サイト