エンタメ感想製作所

音楽や映画、ゲームなどの感想・レビューを素人なりに投稿。専門知識はないけど好きな気持ちは皆平等。

セトリあり※【ライブレポート】ユニゾンにとっての“normal”。他所にとっては“abnormal” UNISON SQUARE GARDEN TOUR 2021「Normal」

UNISON SQUARE GARDEN「普通にやる」ことをテーマに掲げた久しぶりのツアー『normal』を開催した。
バンドが当たり前にやるライブを飾らずにやることは、普段からユニゾンが行っていることだが、それを改めて再構築するようなライブだった。

同時に、ユニゾンにとっての「当たり前」は、他のアーティストにはない「特別な当たり前」であることを示すようなライブでもあった。

参加した日は本来ツアーの最終日であったが、追加公演が決定したため、セトリや内容に関するネタバレを含むことになる。
そのためこれから参加する方はライブ後に読むことを推奨。

セットリスト

1. Phantom Joke
2.オリオンをなぞる
3.meet the world time
4.アトラクションがはじまる(they call it “NO. 6”)
5.メッセンジャーフロム全世界
6.コーヒーカップシンドローム
7.BUSTER DICE MISERY
8.instant EGOIST
9.10% roll, 10% romance
10.RUNNERS HIGH REPRISE
11.キライ=キライ
12.ぼくたちのしっぱい
13.流星のスコール
14.パンデミックサドンデス
15.スロウカーヴは打てない(that made me crazy)
16.君の瞳に恋してない
17.桜のあと(all quartets lead to the?)‬
18.mouth to mouse(sent you)‬

EN
19.さわれない歌

いきなり最新シングル曲『Phantom Joke』の怪しいリフがZeppに響く。
このシングルのリリースツアーも兼ねたライブであることをMCで語っていたが、そんな主役を1局目に持ってきてしまうところに彼等の思い切りの良さと天邪鬼さが伺える。

シングルツアーということはマスト曲はたったの3曲のみで、セトリの自由度が高いと語られたように、3曲目『meet the world time』や11曲目『キライ=キライ』など、近年のライブではご無沙汰な曲も数多く演奏された。
当たり前のライブをやるというのであれば、人気曲であるタイアップ曲やライブ定番曲をやるのが、他のアーティストからすれば当たり前だろう。久しぶりのツアーでセトリにも余裕があるならば尚更だ。
そこを敢えて外して、言ってしまえばマイナー曲を複数組み込んでくるところは実にユニゾンらしい「当たり前」の考え方だなと感じる。

もう一つ彼等らしい「当たり前」を感じるのは、MCほぼ無しでライブを駆け抜けていったことだろう。
これもユニゾンが好きな人にとっては当たり前の光景だが、他のアーティストのライブでは中々珍しい光景の筈だ。これをたまにやるのではなく、ほぼ毎ライブこれをやっているのだから少しおかしい。

ニゾンが直接ファンを勇気づけたり励ますような言葉を口にすることは決してないし、歌詞にもそんな表現が出てくることはほぼない。
それでも例えばアルバムの曲配置や、ライブのセトリで彼等の口にはしない想いを感じ取ることができる。それは受け取る側の勝手な想像かもしれないが、ユニゾンは受け取った音楽をどう解釈するのがはこちらに委ねてくれているのだから、都合の良いように感じても許されるだろう。

今回のライブではラストに『mouth to mouse(sent you)‬』が歌われた。『Phantom Joke』のカップリング曲であり、この先ライブで聞く機会は中々訪れないであろう曲だ。
元々は彼等の盟友であった「bus stop mouse」というバンドへ送られた曲であり、カップリング収録という形で時を経て音源化された楽曲なので、別にファンに対してどうこうという意味合いが含まれている訳ではない。
しかし、ツアーが久々に再開されて、当たり前にライブをやる日々が帰ってくるという状況の中、そのツアーにおけるラストで「さよならが聞きたいんじゃなくて また会えると言ってほしい」と歌われるのは、どうしたってそこに熱いものを見出してしまう。

アンコールでは『さわれない歌』の一曲のみを演奏した。たった1曲だが、選ばれたのがこの曲であるというのが、このライブの全てを物語っている。
『さわれない歌』はユニゾンの音楽やファンに対する基本スタンスがよく現れた曲で、ある意味彼等を象徴する核のような曲だ。
この曲を本当の最後に、それもこの曲のみでライブの幕を下ろすことで、ツアータイトルの『normal』が更に象徴的に浮き上がった。

とにかくユニゾンは、当たり前にライブをやることの大切さをライブを通して伝えていた。その内容こそ彼等と僕等の尺度から見た「当たり前」ではあるが、ただただ「とにかくライブを続けていくこと」という点に関しては、どんなアーティストにとっても大切な「当たり前」だ。
その「当たり前」を決して絶やさないことの重要さを、ユニゾンのライブを通して実感させてもらった。

ニゾンの生存証明だった『Live (on the) SEAT』を経て、ようやく通常営業に戻ってきた今回。4月の『Spring Spring Spring』再現ライブや、きっと開催されるだろう夏フェス、そして秋から始まる『Patrick Vegee』ツアーに向け、ユニゾンのエンジンに十分な燃料が投下されるライブになっただろう。
まだまだ余談を許さない状況ではあるが、昨年の鬱憤を晴らすかのような2021年の躍進に大きな期待を寄せたい。