エンタメ感想製作所

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【ディスクレビュー・感想】生まれ変わったRoselia、事実上の再デビューアルバム Roselia 2ndアルバム『Wahl』

ゴーストオブツシマにうつつを抜かしているうちにいつのまにか1週間強が経過。本筋のストーリー以外に寄り道の多いゲームなので、あれこれやっているとすぐに時間が経ってしまい、今もなおうつつを抜かしている最中です。とはいえ流石にそろそろ書かねば。
そういう訳でRoseliaの2ndアルバムWahlのレビュー・感想です。

約2年ぶりとなる本作。収録曲の中には前作『Anfang』に収録されていた楽曲がいくつか含まれています。これにより純粋なオリジナルアルバムとしては評価が難しく、元々のファン以外には伝わりづらい内容に。しかし、当然意味もなくそんな事するはずもないのです。


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度重なるメンバーチェンジがあったRoseliaには、バンドリの他バンドにはない相応のストーリーがある。それがバンドの強度に繋がっている部分はありますが、いつまでもその影をちらつかせるのは新規層に親切じゃないし、前に進めていないとも受け取られるかもしれません。この先活動していくことを考えると、これまでのRoseliaの歴史に一区切りを付ける必要がありました。
今作はこれまで応援してきたファンに向けてのある種のケジメであり、かつてのメンバーと歩んだRoseliaから、現体制のRoseliaへ転換していくための作品。事実上の再デビューアルバムなのです。

『Anfang』までのRoseliaと『Wahl』でのRoseliaは同一線状にありますが、イコールではありません。そこの部分をもっと明確に分かりやすくする役割を今作は担っています。
普通のバンドであればメンバーチェンジをしたからといって、ここまで色々面倒なことには(少なくともファン側の認識は)なりませんが、Roseliaはいちバンドである以前に『バンドリ!』というコンテンツの一部です。そこにキャラクターが存在するアニメ・ゲームシーンにおけるメンバーチェンジは、過去と現在で二人のキャラクターに分離することに等しいです。

Roseliaの場合『Anfang』と『Wahl』の間でRoseliaも分岐したような感覚が、これまで応援していたファンにはあるかもしれません。
そこの部分を明確化させて、これからは「今」のRoseliaが突き進んでいくんだというところを伝えようとしているのがこのアルバムで、音楽だけを聞いている人には分からないすごく既存ファン向けの作品だと思います。
人によっては残酷なメッセージかもしれませんが、二人のメンバーチェンジがあっても先に進むことを選んだケジメのようなものでしょう。前作アルバムから曲が再録されるのも今回限りで、次作はしっかり外部にも目を向けた作品になってくると思います。


さて、アルバムタイトルの「Wahl」とはドイツ語で「選択」を意味し、収録楽曲の背景などを踏まえたものになっています。それに加えて上述したように、かつてのRoseliaから新たなRoseliaに生まれ変わることを「選択」した、というような意味合いもあるように感じます。

今回敢えて再録した楽曲達がありますが、何故この曲達が選ばれたのかをずっと考えていました。
まず第一に、アルバムとしてのストーリー面に関わるといった意味もあるでしょう。しかしそれだけだと、どうにも『Determination Symphony』が含まれていることに疑問が出てきました。
そうして考えているうちに、今作収録曲が今後Roseliaがライブで演奏する際の中心楽曲となるのではないかと思い至ります。今作に入っていない曲を全くやらないことはないと思いますが、現体制の象徴はこの曲達になるという「選択」をしたのではないでしょうか。後々触れる『Song I am.』の意味や背景を踏まえると、あながち間違ってはいないと考えています。


長々とお疲れさまでした。なんとここからようやく楽曲の話に入っていきます。ここまで読んだからには最後まで付き合ってくださいね。
1曲目を飾るの『R』は、遠藤さんの脱退と明坂さんの降板が発表された後にリリースされた最初のシングル曲です。曲調的にも1曲目が似合いますが、リスタートを飾った曲であるという観点からも今作のスタートを任せるに相応しい楽曲でした。


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次いで『BRAVE JEWEL』『Determination Symphony』とアルバムは展開されていきます。ここはしっかり盛り上がりを引き継いでいて、序盤の山場として申し分ない『FIRE BIRD』に繋がっていく構成です。
とはいえ『FIRE BIRD』は静かなイントロから始まる、所謂「静から動」な曲であるため、ここは次の曲である『Safe and Sound』と曲順を入れ替えて、より静寂からの激情を表現した方が良かったのではないかなと思います。今の曲順だと最高潮の盛り上がりから急にゆったりとしたサウンドに移行してしまい、更にその後の曲への繋がり方も急過ぎるように感じます。


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ここで初音源化楽曲の一つ『Avant-garde HISTORY』がやってきます。まずイントロからただ事じゃありません。まさかのプログレメタル要素を持った楽曲に笑ってしまいました。Roseliaが持つ孤高の輝きや崇高さを一層際立たせるような、とにかく演奏が堪らない曲です。Roseliaの楽曲の中でも最高難度クラスではあるでしょうが、この曲を任された彼女達の成長も感じます。
過去の全てを背負い、この先何が起きようとも歩みは止めないことを歌った歌詞はガルパのRoseliaバンドストーリー2章も想起させます。使う言葉や表現、込められたメッセージは高校生らしからぬものですが、それを歌ってこそ様になるのが湊友希那という圧倒的な歌姫の存在です。このスケール感の歌詞を歌って負けないどころか、どんどんリードしていってしまうのは流石の一言。勿論演奏にも全く負けていません。
ちなみにこちらはアニメ3期で紗夜が作成して武道館で演奏された楽曲ですが、こういう曲が好みなんだなと思うと何だかもっと紗夜を好きになれそう。

続いてガルパ総選挙1位記念の楽曲で初音源化となるシンフォニックハードロック『Break your desire』ですが、実に濃厚なエレガ感を感じます。エレガというよりは上松感でしょうか。
イントロから友希那の突き抜ける高音シャウトが鮮烈な印象をいきなり与え、壮大でハードな世界観で一気に駆け抜けていきます。荒ぶるストリングスがもりもりで、エレガが得意とするサウンドを十二分にRoseliaの音楽の中へ落とし込んでいる曲です。
どこかで目にしましたが、水樹奈々さんとエレガのタッグが好きなら間違いなく気に入るでしょう。


ここからはガルパのストーリーに関する曲がまとまっています。
まず最初に来る『Re:birth day』はRoseliaのバンドストーリー1章の曲となり、前作『Anfang』から再録されています。これは次に配置されたバンドストーリー2章の曲である『Neo-Aspect』も同じですね。
上記2曲とも変化することや新しい姿を歌った曲であるため、今作のテーマともマッチしている部分があるでしょう。また、流れを変える1曲として『Re:birth day』は適していますので、ここからアルバムが終盤に向かっていくことを表現するキーにもなっています。
そういえば『Ne0-Aspect』はこれで3度目の再録ですね。再録とは言えそれぞれコーラスなどの録り直しが発生しているため、全てがリマスター版ではあるのですが、変わったいきさつのある曲になってしまったな。


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ここからの3曲はガルパのRoseliaイベントストーリーである、ノーブル・ローズ3部作のテーマソングが並びます。『約束』と『"UNIONS" Road』については既にシングルで音源化されていますが、この2曲を並べることで『Song I am.』へのお膳立てをしています。


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『Song I am.』 はRoseliaのこの先を語る上で絶対に欠かせない曲であり、彼女達の物語を追う上で絶対に外せないノーブル・ローズ三部作を締め括った曲でもあります。Roseliaの最初期曲である『LOUDER』をどことなく想起させるような雰囲気の曲ですが、それもそのはず。この曲はRoselia結成前から友希那を支え、導いてきた父親の曲である『LOUDER』と対比し、友希那自信がRoseliaの未来を進むための曲なのです。『LOUDER』があったからこそ『Song I am.』は生まれ、それによって『LOUDER』はその役目を終え、Roseliaで演奏することはもうないと、作中では語られています。リアルライブでも『LOUDER』が演奏されることがなくなるような旨の発言がされており、実際に今後演奏されることがなくなるのかは定かではありませんが、まさしくキャラクターとリアルライブがリンクしています。
歌詞に目を通してみると、やはり『LOUDER』に導かれて歌っていたこれまでと、その先に進んでいく姿が表現されています。自身を導き続けてくれた全てのものへの感謝、そして新たな世界に向かって歌っていく決意を歌い、最後の最後に「Louder」と叫ぶ。この曲は『LOUDER』に対するレクイエムと言ってもいいかもしれません。
そして過去への感謝と未来に進む決意をもって「選択」をしたという意味では、やはりアルバムのテーマにも沿っているのです。先ほど『LOUDER』に対するレクイエムと言いましたが、それだけでなくWahl』以前のRoseliaにも向けたレクイエムなのかもしれません。


過去と決別する訳ではなく、その想いは引き連れて新たなRoseliaへと孵化するためのアルバムが今作『Wahl』でした。
遠藤さんや明坂さんがいたRoseliaを僕達は忘れないし、忘れてはいけないとも思うのですが、僕達は今に目を向けなければいけないのです。Roseliaはメンバーが変わっても未来に進むことを決めました。僕達もいつまでも過去に囚われてていてはいけないのです。今作はそれを教えてくれる、気付かせてくれるアルバムだったのではないかと思います。
前作アルバムに収録された楽曲をすぐに再録するという、普通ではないことをやってまでそれを伝えたということには、非常に大きな意味があります。これまで応援してきたファンへのメッセージを伝えたRoselia。非常に内向きだった今作から飛び出し、次作はもっと大きな世界に向けたアルバムになることでしょう。

Wahl【Blu-ray付生産限定盤】

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  • アーティスト:Roselia
  • 発売日: 2020/07/15
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Wahl【通常盤】

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  • アーティスト:Roselia
  • 発売日: 2020/07/15
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