色々あった2020年が終わり、まだまだ色々ありそうな2021年が始まった。
苦しい日々が続く中ではあるが、バンドリ新年最初のCDリリースと相成ったのはPoppin'Partyの16thシングル『Photograh』だ。
ポピパらしいキラキラドキドキを表現した楽曲は、落ち込みがちな僕らの気持ちを明るく照らしてくれるものだった。
Photograph
決して暗い曲ではなく楽しい曲なのに、どこか切なく泣けてくる曲に僕は非常に弱いのだが、この『Photograph』もその手の曲だ。楽しかった思い出たちを写真になぞらえ、アルバムを捲るように振り返る様子と、もっと輝く思い出がこの先に待っているという期待を描いたノスタルジーと未来への希望が同居した曲になっている。
こういったミドルテンポで心に響く曲はポピパも得意とするところだが、今回は『Returns』や『Light Delight』などの激情型とは違う構成で、どちらかと言えば『White Afternoon』に近いものかもしれない。
曲の雰囲気からはどことなく春が目前に迫った冬の日を連想させる。この1年の思い出を振り返りながら、来たる新学期に胸を躍らせている香澄の姿が容易に浮かび上がる。サビのリードギターが忙しなく展開していく様子も、沢山の思い出があるためにアルバムの写真が次々と切り替わっていっているような印象を受けた。ポピパのギターは本当に音が良い。
何気ない日常にフォーカスを当て、そこにある幸せを歌うのはとてもポピパらしいし、それだけでなくこの先の未来ではもっとキラキラした思い出が作れるというところに着地するのも香澄らしい歌詞だ。変化することや新しい出来事をむしろ歓迎している。
これはバンドのテーマが近しいAfterglowと差別化できる部分だろう。彼女たちが「変わっていく物事の中でも変わらない当たり前を大事にすること」「新しい当たり前を見つけること」をテーマにする一方、ポピパは「まだ見たことのない景色」や「未来に対する純粋な希望と期待感」が根底に流れている。この『Photograph』でもそれがよく感じ取れた。
開けたらDream!
おもちゃ箱を開ける側ではなく、収納されたおもちゃの視点から描かれた『開けたらDream!』は、冒頭から木琴の音が入ってきたりと、バンドにはない音も使われた楽しげな曲だ。
バンドリ内ではハロハピの楽曲と似た傾向のある曲だが、あちらはおもちゃ箱というより遊園地レベルの賑やかさなため、こちらの方がより素朴な印象を受ける。
おもちゃ感を演出しているのはバンド外の音だけでない。メロディーとは少々外れた位置から聞こえるキーボードと、自由気ままに動いていくギターの音色からは、良い意味で間が抜けている「チープ感」が出ていて、おもちゃ箱の楽しさを表現してくれている。
ラスサビに入ると一段階ギアが上がっていく。ただ盛り上がりを作っているというよりは、おもちゃが散らかったようなゴチャゴチャ感を演出している気もする。直前には「ヒミツの箱をひっくり返そう」という歌詞もあるが、箱を落として中身が散らかってしまった。そんなシーンが脳裏には浮かぶ。『Photograph』もそうだが、ポピパは何気ないシーンを切り取って特別な瞬間にする能力に長けていると感じる。
普段の姿からは想像つかないような豊かな表現で歌詞を書く香澄だが、今回も一見子どもっぽい言葉を散りばめた歌詞の中に詩的な表現を差し込んでいる。「夢の瞬間(とき)を繋ぎ」と言うのは、同じく子どもっぽい歌詞のハロハピでは出てこない表現だろう。
また、思い出は時を超えるというニュアンスの表現も2番サビに現れる。『Photograph』の後にこの歌詞を見ると、また少し意味が大きくなってくるのではないだろうか。
終わりに
呑気にしてたらモニカを通り越してRoseliaもリリースされてしまった。
そんな現実からは目を逸らしつつ、改めてこのシングルを振り返るが、表題曲はポピパの中でも屈指の名曲になったのではないだろうか。もちろん僕がこの手の曲に弱いという主観も入るが、かなり人気を集める曲なのは間違いないと思う。2020年はコロナによって何かと悲しいことが多かったが、その中でも日常の1コマを切り抜けば楽しい思い出はあったはず。そんなことを思わせてくれる曲でもあった。
2月にはモニカとの合同ライブが開催される。状況的に開催されるかはまだ分からないし、僕自身チケットを取れていないので生で見ることは難しいかもしれないが、ライブで披露されるのが楽しみな曲だ。
それではまた次回!