エンタメ感想製作所

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【ライブレポート】バンドリに黒船来たる。初ワンマンとは思えぬ完成度 Morfonica 1st Live Cantabile

5月に予定されていた初お披露目が流れ、8月の富士急を経てようやくワンマンに漕ぎ着けたMorfonicaの1stライブ『Cantabile』が開催された。
富士急でのライブで不安視されていた前評判を覆し、今回のライブには大きな期待を寄せられていたモニカだったが、率直に言ってその期待すら凌駕する内容を見せつけられた。まさかここまでやれるとは。終演後、感嘆のため息が思わず溢れた。




セットリスト

1.Daylight -デイライト-
2.chAngE
3.月光花
4.深海少女
5.金色へのプレリュード
6.ブルームブルーム
7.Nevereverland
8.CQCQ
9.メリッサ
10.flame of hope

EN
11.Daylight -デイライト-
12.ブルームブルーム


今回の会場となった東京ガーデンシアターは、6月に開業となった新しいホールだ。僕も今回初めて行くホールだったのだが、入ってみるとキャパの割にステージが近く見える。僕の席はアリーナの一つ上の階だったのだが、実際始まるとかなり演者との距離は近く感じた。規模が違うがこの感覚は武道館のそれに近い。
僕はこの会場に金曜日のポピパ2日目と、来週水曜のユニゾンワンマンで三度訪れる。良い会場であったことは素直に喜ばしい。

1stワンマン記念すべき1曲目は勿論『Daylight -デイライト-』から始まった。
音源については僕も少し苦言を呈した曲だったが、ライブで一気に印象が変えられた曲だ。
その印象は良い意味で今回も裏切られることなく、ヴァイオリンとボーカルのバランスも非常に良く聞こえてきた。富士急と比較してもメンバーそれぞれに一層自信がついているように見える。
前回序盤ではまだ緊張が表情に現れていた進藤さんも、今回は最初から笑顔を見せて余裕を感じさせるステージングだ。今日までの日々が確かな自信となって、ステージで表現されているようだ。

前回、あわや事故となるところを進藤さんのメンタリティーにより乗り切った『chAngE』は、イントロこそ少し足並みが揃わない雰囲気はあれど、特に問題なく進行したことに思わず胸を撫で下ろす。
改めて聞くと歌うのが難しい曲だ。カバー曲なので今後どこまで歌い続けるかは定かでないが、歌唱力の面ではまだまだ伸び代がある進藤さんの成長が顕著に現れる曲ではないだろうか。

ここで新カバー曲が披露される。
曲が始まる前にポエムのような口上が述べられるので、そこから何の曲かを想像していると、聞き覚えのある美しい旋律が奏でられた。
Janne Da Arcの名曲『月光花』のメロディーだ。
思わず「マジか…!」と声が溢れた。なるほど確かにモニカがカバーするのにぴったりな曲である。
Ayasaさんのヴァイオリンが光る曲なだけでなく、進藤さんの低音の魅力も輝く。
彼女の低音は続く『深海少女』でも遺憾なく発揮される。
月光花』もそうだが、恐らくもう少し高いキー設定でも歌える筈なのだ。それを敢えて少し低めの設定にすることで、本来曲が持っている繊細で切ない空気感を生かしているように感じる。特に進藤さんの低音はもがきながらも前へ進む「足掻き」がよく似合う。
聞いている側からすると低く感じるが、歌の表現としてはこの音が適しているだろう。

『金色へのプレリュード』『ブルームブルーム』とオリジナル曲が続くと、再びカバー曲のターンだ。
1曲目はナノの『Nevereverland』。まさかの選曲に再び声が漏れ出す。確かにこの曲はストリングスが入っているが、ナノのカバーは来るとしたらRASかRoseliaだと思っていた。
これまでどちらかといえばしっとりとした曲が多く、激しいアレンジの曲とは少し距離があっただけに、モニカの新たな扉が開かれた瞬間だっただろう。実際演奏もかなり力強いもので、モニカで出来る表現の幅も広がった。
そして神様、僕は気づいてしまったの『CQCQ』カバーと、更に予想外の角度から弾は放たれる。これもモニカで表現されるとは思っていなかったサウンドだ。
楽器陣はどうしてもドラムとヴァイオリンに目が行きがちだったが、この2曲ではそれ以上にギターとベースを目で追っていた。『Nevereverland』ではギターの直田さんが速いBPMにノッた良い弾きっぷりを披露し、ベースの西尾さんは『CQCQ』サビ前でスラップをビシッと決めていく。

これ以降、この二人にもしっかりと目と耳が傾くようになったのだが、その意識で聞いていると初のワンマンとは思えないバンドの完成度に驚いた。勿論プロ組が歩幅を合わせている部分はあるだろうが、それでも見劣りしない演奏と、何より音の纏まりが良い。最初でこれなら1年後は一体どうなってしまうのか。ポテンシャルの高さはバンドリでも随一ではないか。

本編ラスト『flame of hope』はまさしくこれが聞きたかったというようなサウンドで、ヴァイオリンとギターが正面からぶつかり合うまさしく燃え上がる曲だ。ヴァイオリンをセーブして音全体のバランスを取るのではなく、ヴァイオリン以外全ての音をブーストする足し算でバランスを取っている。それをライブで出来るだけの熱量と、バンドとしての厚みを感じた。
本編ラストにて最高潮の盛り上がりを演出され、素直に「まだ聞きたい」と思わせてくれた。

アンコール前のMCでは進藤さんの涙もあった。色々なプレッシャーや緊張もある中で、とても真剣に音楽と向き合い、そして楽しんでくれたんだなと、僕はその涙を微笑ましく見ていた。
ところがあれだけ泣いていたのに曲が始まるとすぐに立て直していつも通りに歌っているではないか。やはりとんでもないメンタルだと思う。この人は本当に人前でパフォーマンスする才能に溢れているのかもしれないと思わされた。


元々大きな期待のもと参加していたが、それ以上の物を見せられて幕を閉じたライブだった。
進藤さんのフロントマンとしての胆力と才能。ギターやベースのレベルアップに伴う、バンドとしての完成度。新カバーによる新たなMorfonicaの一面。様々な要素を堪能できた。
RASは別枠として、バンドリのリアルバンド初ワンマンとしては一番のクオリティーだったと感じるライブだった。
勿論まだまだこれからな部分は大いにある。演奏がバタついたところもあるし、弾いているフレーズもそれほど難しいものではないところが多いだろう。歌にしても声がうわずった部分もあったし、そもそもピッチで言えばまだまだ不安定だ。
しかし、ライブとは生き物であり、最終的にはどれだけ観客を熱狂させられたかで評価は決まる。演奏が下手でも、歌が下手でも、そこに確かな熱量が存在し、オーディエンスの心に火を灯せるならばそれが正解だ。それは古今東西様々なバンドが体現している。その点で言えば今回のライブは及第点どころか十分過ぎるほどに合格点だった。

今日のスタートから1年後、どこまでこの才能と魅力を膨らませられるのか。それが今から楽しみで仕方ない。
Morfonicaはこの日、確かに花開いた。どこまで大きな花を咲かせることが出来るのか。その歩み一つ一つを楽しみにしたいと思う。




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