こんにちは、僕です。
今回は三澤紗千香さんのニューシングル『この手は』のレビューになります。
三澤さんは元々ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメントからアーティストとしてCDをリリースされていましたが、2016年にベスト盤をリリース後、事実上の活動休止状態でした。それがユニバーサル・ミュージックへと会社を移し、再デビューとも言える4年ぶりの復活を果たしました。
僕も彼女のリリースを心待ちにしていたひとりです。ここ数年、声優としてのキャリアと実績を積み重ね、バンドリにキャスティングされたことも含め、多様な音楽に触れる経験を経て、変化した姿を見せてくれました。
これまでの彼女のアーティスト像は黒のイメージが強く、落ち着きがあるというよりは勢いがあるという印象が、楽興と合わせてありました。(後期から少しずつシフトしていった印象もありますが)
それが今回のジャケットや新たなアーティスト写真は、白を基調に淡さと儚さを併せ持った大人びたものになっています。前までとは違うというメッセージが伝わってきました。そしてそれは楽曲の中にも顕著に現れています。
この手は
かつての勢い溢れる楽曲から一転、新たなスタートを飾る1曲目はミディアムテンポな楽曲。行き場のない感情が溢れるかのような熱量がこもった演奏は、シューゲイザーを彷彿とさせます。歌を諦めず、また歌う日を待ち焦がれていた三澤さんの情念とマッチしていて、とても重みのある楽曲に聞こえます。Aメロの歌い始めに敢えて残している深いブレスが印象的ですが、曲全体でブレスは残す方針を取っています。生の成分がそのまま残されたことで、一層感情が乗って聞こえます。
ラジオで聞いたお話ですが、曲を作られた方もこれが選ばれなかったら先がないくらいの想いの中作られたそうで、2人分の気持ちが乗っかっている訳です。ギターもその方が弾いているそうです。情念が篭っている訳だ。
これまでのアーティスト三澤紗千香とは明らかに別物で、スキルは勿論のことながら、こうした難しい楽曲を歌いこなすだけの人間的な成長を感じさせます。この曲を再出発の1発目に置いたのは意味あってのことですし、ディレクションに参加して要望を出せるようになったことなど、アーティストとしての成長と自我を感じました。
こちらもラジオでの発言ですが、今回は歌録りの後に楽器を録ったそうで、その際に「東京ドームにソロで立ち歌っている」ことをイメージして演奏されたそうです。音の広がりや奥行きがあるなと元々感じていましたが、そういったとても大きなステージを想定していた故だったということです。実際、これだけの想いが篭る重たい曲ですので、大きいステージで聞いてみたいと感じさせてくれます。
あと一歩
「この手は」と異なりポップな楽曲でコーラスワークが特徴的です。声の重ね方など、少しレトロな印象を受ける音色ですね。やはりこれまでの三澤さんの楽曲にはあまり見られなかったタイプの曲です。
曲の印象は異なりますが、テーマ的には過去から現在、そして未来という部分が「この手は」と共通しています。この曲の方が過去に強くフォーカスしています。かつての後悔をリアルな情景と共に表現して、それでもまた進んで行こうという曲になっています。
加えて「この手は」とストーリーが続いているような印象も受けました。「この手は」より先の未来でかつてのことを振り返っていて、、というような解釈もできますね。
これまた歌うのが難しい曲だなぁという楽曲になっていて、改めて三澤さんの歌唱力の成長を実感します。一瞬だけ中途半端に音が高くなるところは音程を上手く取りにくいですし、単純にリズムキープも簡単ではない曲だと思います。
終わりに
前までの三澤さんの楽曲も好きでしたが、今回の方向性も僕はとても好きでした。僕はデビューから彼女の活動を追っていましたので、この曲に辿り着くまでのストーリーを知っていますし、明らかに上手くなっています。それを知った上で聞くこのシングルは、非常に刺さるというか……。音楽も長く聞き続けるものだなぁと改めて感じさせてくれました。今後どのような楽曲を歌っていくのかはまだ分かりませんが、大いに期待させていただきたいと思います。
それでは今回はこの辺りで。
さようなら!
- アーティスト:三澤紗千香
- 発売日: 2020/04/29
- メディア: CD
- アーティスト:三澤紗千香
- 発売日: 2020/04/29
- メディア: CD