エンタメ感想製作所

音楽や映画、ゲームなどの感想・レビューを素人なりに投稿。専門知識はないけど好きな気持ちは皆平等。

【ライブレポート】RASの世界は天井知らずに広がり続ける RAISE A SUILEN「THE DEPTHS」

席数も半分まで減らし、マスクを付けて声は出してはいけないという異例の条件で開催されたバンドリ夏の野外3Daysライブ。
僕は初日のRoselia公演はライブビューイングで参加し、Day2のRAS公演と最終日ポピパ公演に現地参加した。

僕自身、客を入れてのライブに足を運ぶのは約半年振りで、RASを見るのに至っては8ヶ月振りというロングスパンが空いていた。加えて感染対策によるこれまでなかった新しい形でのライブ開催ということもあり、開演前は久々のライブに対するワクワクと新しい試みに対する胸の高鳴りを覚えつつも、何事もなく終わるのか、果たして心の底から楽しめるのかといった不安感があったことも事実だった。当日は雷雨により開演が30分押すハプニングもあり、無事最後まで終わるのかという不安は強まっていた。

しかし、そんな懸念は杞憂であったことを、僕はすぐさま思い知らされるのだ。


セットリスト

OA.Happy Around!
1.Happy music!
2.カバーメドレー(バラライカ行くぜっ!怪盗少女~DIVE TO WORLD~恋愛レボリューション21ムーンライト伝説~DAYS~ココロオドル
3.Dig Delight

MA.RAISE A SUILEN
1.Invincible Fighter
2.A DECLARATION OF ×××
3.SOUL SOLDIER
4.UNSTOPPABLE
5.HELL! or HELL?
6.Beautiful Birthday
7.Takin‘ my Heart
8.激動
9.恋しさと せつなさと 心強さと
10.DEPARTURES
11.DRIVE US CRAZY
12.!NVADE SHOW!
13.Sacred world
14.REIGNING
15.EXPOSE ‘Burn out!!!’
16.R・I・O・T

前日のRoselia公演でもD4DJのユニットがOAを担当していたが、今回もD4DJよりHappy Around!がOAを務めた。
恥ずかしながらD4DJは殆どチェックしていないため少ししか分からないのだが、前日のMerm4id共々非常に良い楽曲とパフォーマンスを披露していた。特にカバー曲メドレーは世代直撃の楽曲揃いで会場を温めるOAの仕事を十二分に果たしていたように思う。ライブに行くかは定かではないけど、楽曲はチェックしておこうと思わされる内容。ちなみにMerm4idの感想は「エッチだなぁ」です。(ちゃんと良かった)

Happy Around!の出番が終わると間髪入れずにRASが襲来する。
ライブの始まりにぴったりな疾走感を持つ『Invincible Fighter』で幕が上がると、ライブでのコールが盛り上がる『A DECLARATION OF ×××』が立て続けに演奏される。今回客席から飛ばされる歓声はないが、そんなことは関係ないとばかりにフルスロットルの演奏がぶちかまされた。
ここで僕は「あぁ、声の有無なんて関係ないな」と確信した。どうであれRASのパワーが弱まることはないし、鳴らされる音はファンの心を熱くする。いや、むしろ声を出すという行為に意識を割かなくていい分、RASの音と真正面から対峙することができる。
それに気付いた僕は、この日に限らず現地にいた2日間、いつも以上に音に合わせて踊っていたし、前のめりに音楽を浴びていた。RASの幕間で流れていたMix音源にも合わせてずっと体を動かしていた。2日間、幕間映像以外のタイミングでは1度も座らず音楽がでかい音で鳴ってる間は動き続けた。

そもそも僕は、鑑賞中に歌ったり声を出したりせず、人の迷惑にならない範囲で自分の好きに楽しむスタンスのライブで育った人間だ。それ故、コールや一緒に歌う行為をしない形態というのはむしろ当たり前の環境ということもあり、そこに対するストレスは他の人より感じていなかったのかもしれない。
ステージ上で最高の音楽が鳴らされていれば、それだけで100%楽しめる才能が僕にはある訳だ。煽るようで申し訳ないが、その点に関しては僕の勝ちだし羨ましかろうと思ってしまった。

余談終了――。
『SOUL SOLDIER』『UNSTOPPABLE』『HELL! or HELL?』とキラーチューンが連続して演奏されるゾーンに突入。
何のための席間隔なんだという話になるので、勿論自分の席の範囲から飛び出すようなことはしていないが、僕の動きもどんどん激しくなっていく。ヘドバンはいつもしているが、今日は珍しくツーステも踏んでしまった。
会ったことがある人なら分かると思うが僕はガタイモンスターなので、普段のライブではめちゃくちゃ周囲に気を遣って人にぶつかりそうなことはしない。でも今日ばかりは我慢できんかった。野外で左右が空いているちょっとした開放感と、客席からは誰も声が出せないというステージ上の演奏に全てを向けられる環境が、僕を突き動かしていた。

その後『Beautiful Birthday』からライブは比較的しっとりとしたゾーンに入っていく。カバー曲にはお馴染みの『激動』と小室サウンドが2曲演奏された。バンドリでこのカバーが聞けるとは、と今でも思う。RASの中では最もゆったりとした曲になり、印象も変わって感じる。
驚かされたのはボーカルRAYCHELLさんの歌唱力の高さだ。彼女の歌の上手さは今更語ることでもないのだが、RASオリジナル曲にはない聞かせるタイプの曲において、その細やかな表現力が際立つ。パワフルなだけではない繊細さも併せ持つボーカリストであることが顕著に現れていた。

ライブも後半戦。『DRIVE US CRAZY』により再びエンジンは再点火される。
普段なら会場全体の大合唱が聞ける曲だが、この日はステージ上からの咆哮のみ。RASの面々はそれに怯みもせず、いつものように我々を煽り、昂らせる。僕もそれに全霊を持って応えたつもりだ。
玩具箱をひっくり返したような楽曲『!NVADE SHOW!』では、ギター小原さんが魅せに魅せた。
普段より背面弾きやステージに寝転がりながらの演奏は当たり前。前回ライブではRage Against the Machineのトム・モレロばりのスクラッチ奏法を披露した期待の変態ギタリストである彼女は、今回お立ち台にギターを置いた琴弾きに挑戦。それだけに留まらず光線銃をピックアップに近付けて音を拾うという、まさかアニソンライブで見る日が来るとは思わなかったプレイを披露。
次はどんな変態プレイを見せてくれるのか。ドリル奏法? もしかしたらギターに何かを組み込んでしまうかもしれない。そんな期待がどんどん湧き上がってしまう。

完全新曲の『Sacred world』はアニメの主題歌ということで、あまりRASらしい曲ではなかったが、何か不思議な展開をする曲だった印象だ。既存の曲進行とは少し異なる構成だったように思える。…正直どんな曲だったのかよく覚えていないので、新曲の話はこれくらいで。(すみません)

今こうして振り返ってみると、アルバムの新曲をすべて披露したどころか、カバー曲と新シングル曲以外は1stアルバム「ERA」の並びそのままのセトリだった。アルバムリリース直後かつ、現状RASのオリジナル曲全てが収録されているから出来たことだが、中々見る機会のない攻めたセトリだ。
アンコールなし、幕間映像なしのライブは今に始まったことではないが、歓声が出せないという特殊な環境の中、3日間で圧倒的にライブ空間に没入することができたのはRASだった。改めてRASというバンドの強度と底知れなさを肌で感じられたのではないかと思う。演奏スキルとライブ力、ともにどこのステージに出しても必ずファンを増やせるバンドリの切り札だ。
常々バンドリはアニメ業界だけでなく、もっと大きなバンドシーンに出ていくべきだと言い続けてきた。ここ数年フェスへの出演などを通して少しずつその点についても前進していると思う。この日のRASのライブはそんなバンドシーンへ、彼女達の世界をもっともっと広げていくだろうという確信を持たせるライブだった。

僕の夢と理想も乗せて、世界をRASに染め上げる日が待ち遠しい。その時は会場で直接その姿を見届けたいものだ。


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